アジア太平洋地域のラグジュアリー市場
ウェーバー・シャンドウィックのAPAC Intelligence Bulletin(アジア太平洋地域情報速報)では、毎週、アジア太平洋地域の産業分野や市場を方向付ける重要な動向をお伝えしています。
- 広範囲にわたったパンデミックの規制を乗り越え、アジアのラグジュアリー市場は安定と成長へと向かっています。
- アジアでは、ホテル、不動産、自動車が主な成長分野となっています。
- ラグジュアリー部門における変革は、持続可能性、リセール(再販)、ブランド体験が原動力となっています。
- Z世代特有の優先順位が、ラグジュアリー市場の継続的な進化と今後の課題の両方に大きく影響しています。
アジア太平洋地域のラグジュアリー市場は約3.4%縮小し、2020年には市場価値で20億米ドル以上、収益で数百億米ドルもの損失が発生したと言われています。しかし、同地域ではパンデミック対策が緩和され、ラグジュアリー部門の支出は2020年以前の水準に戻りつつあります。最近の業界レポートによると、中国のラグジュアリー市場は2019年以降、規模が倍増していることがわかりました。インドのラグジュアリー市場は2022年に41%成長すると予想されています。
ホテル・不動産・自動車
この市場の主な成長分野は、ホテル、不動産、自動車です。香港特別行政区の高級不動産売上高は、年末までに過去最高だった2018年を超える見込みです。オーストラリアの高級不動産市場もかなりの好況を迎えています。シンガポールの投資家たちは、国境措置の緩和により、同市場の高級不動産分野が再活性化することを期待しています。
自動車メーカー各社は、インド、マレーシア、中国、オーストラリア、韓国で新たな高級車の販売を開始しました。世界大手の高級自動車ブランドは、最近、インドとインドネシアで製造・輸出施設を拡張したとのことです。一方、ある多国籍企業系列のホテルブランドは、マカオ特別行政区、インドネシア、オーストラリア、中国、日本で新たに高級ラインを立ち上げました。
従来とは異なるラグジュアリー
アジア太平洋地域のラグジュアリー市場は、成長と同時に、著しい進化を遂げつつあります。具体的には持続可能性、リセール(再販)、ブランド体験の分野において顕著な変化が見られます。最近行われた高所得者を対象としたグローバル調査では、回答者の3分の2が、高級不動産を購入する際の「非常に重要」な検討事項として「持続可能性」を挙げています。
持続可能性の優先順位と、パンデミックによる収入の減少が相まって、高級ブランド品の再販市場が大幅に拡大しています。中国では、高級ブランドの再販市場の規模は380億米ドルと推定されており、同国の従来の高級ブランド部門の二倍のスピードで成長しています。世界的に有名なファッションブランドは、収益性が高まりつつある再販市場の開拓に世界的な投資を行っているそうです。
最も顕著なのは、高級ブランドにおけるブランド体験の変革です。多くのブランドにとって、この変革はさまざまな分野においても求められているデジタル化の一部となっています。しかし、中には、新たな体験やラグジュアリーの定義を模索しているブランドもあります。例えば、韓国最大の技術系企業は、ユニークな体験を求めるZ世代のニーズに応えるため、2021年にオーダーメイドの製品ラインを立ち上げました。
Z世代の違い
アジア諸国のラグジュアリー部門の進化は、Z世代のユニークな優先事項が大きな原動力となっています。例えば、再販のトレンドは、Z世代の持続可能性への関心から生まれたものです。ラグジュアリー業界の課題は、このような層の価値観と真摯に向き合うことにあります。あるグローバルなファッションブランドは、Z世代が重視する包括性とは相反する、人種的なステレオタイプをメディア上で広めているとして、現在、非難の声を浴びています。
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この報告書はウェーバー・シャンドウィックのインサイト&情報チーム(シンガポール)が作成したものです。
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