
アジアにおける旅行・観光業
ウェーバー・シャンドウィックの APAC Intelligence Bulletin (アジア太平洋地域情報速報)では、毎週、アジア太平洋地域の産業分野や市場を方向付ける重要な動向をお伝えしています。
- アジア各国ではここ最近、より渡航しやすい国境政策に取り組んでいるものの、旅行・観光業界は依然として苦しい状況。
- 過去2年間にわたる不安定な状況やさまざまな規制、そして昨今の地理的・政治的緊張の高まりは観光事業者にとって深刻な打撃を与えています。
- アジア諸国はある特定の観光分野(医療観光・スポーツ観光・文化遺産観光など)を強化することで、旅行産業が復興することを期待しています。
- 各市場の状況に関わらず、サステナビリティと国際パートナーシップは今後も旅行・観光業界の優先事項として注目されていく模様。
パンデミックが継続していく中、ワクチン接種の普及(ならびに経済的な負担の増加)により、多くのアジア諸国でおいてはCOVID-19が最初に流行して以来初めて渡航制限が大幅に緩和されました。しかし、専門家の間ではアジア地域の観光・旅行業界は困難な状況が続くと予想されています。
再開への真の取り組み
過去2年間、アジアにおける海外旅行再開への試みは幾度となく失敗を重ねてきました。しかし最近では、アジア全域で国境政策の緩和に向けた真の取り組みが行われています。ニュージーランドは海外旅行に関する政府勧告を撤回し、オーストラリア政府観光局は国際観光事業の再開に向けて2900万米ドルのキャンペーンを開始し、フィリピンは2月に1万人以上の海外入国者を受け入れています。
まだ完全に渡航者の受け入れを再開していない国でも、渡航再開への期待が高まっています。韓国は現在、シンガポールとサイパンとの間でしかトラベルバブルを維持できていない状況ですが、ソウル市長は最近、韓国の首都に数多くの新たな観光スポットがあることをアピールしました。マレーシア政府は、中国、オーストラリア、シンガポール、日本、イギリスなど12カ国とのトラベルバブル構築について協議しています。
今後の課題や障害
しかし、業界の真の復興には更なる解決策が必要であると各市場の事業者は考えています。例えば、インドネシアのホテル・レストラン協会は、旅行事業者が抱える金銭的な負担を軽減するための政策支援を求めています。また、中国の地方政府においては、従来の国家政策とは異なり、COVID-19抑制策としてのロックダウンを最小限に抑えるよう指示されているとのことです。
新たな障害に直面している国も見受けられます。ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、これまで両国からの観光客が多かったタイでは観光客が減少することが予想されています。香港特別行政区では、COVID-19感染者数が増加していることから、隔離や検疫の必要性が高まることが予想され、香港のホテル2万室が政府によって確保されました。
解決策
多くの国では、特定の観光分野へ投資することで旅行業界が活性化されることを期待しています。シンガポールは、スポーツ観光客の誘致目的として今後7年間にわたりF1グランプリを開催することを表明しました。インド政府は、医療観光市場の再建を目指して、「Heal in India (インドで癒されましょう)」キャンペーンを企画しています。中国は、文化遺産の観光に投資することで地方の経済成長を強化する方針です。
アジア全域で解決策をめぐる議論において、常に浮上するのはサステナビリティと国際パートナーシップというテーマです。トラベルバブルは観光産業の復興にとって重要な要素である一方、各国政府は相互の観光業を発展させて行くことができるような、より高度なパートナーシップを模索しています。インド政府はオーストラリアと、またフィリピン政府は日本と、正式な観光パートナーシップを結ぶことを表明しています。
いずれの解決策においても、サステナビリティ(持続可能性)はますます優先されて行くことでしょう。例えば、日本では、古くからある捕鯨の村が鯨の保護に力を入れながら、現代の観光マーケティングを展開しています。シンガポールでは現在、「持続可能な航空ハブ」の青写真を作成中とのことです。また、オーストラリアのある観光地では、今後のエコツーリズム発展という観点からその地域の森林伐採を制限する取り組みが行われています。
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この報告書はウェーバー・シャンドウィックのインサイト&情報チーム(シンガポール)が作成したものです。
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