廃棄物管理および処分
ウェーバー・シャンドウィックの APAC Intelligence Bulletin (アジア太平洋地域情報速報)では、毎週、アジア太平洋地域の産業分野や市場を方向付ける重要な動向をお伝えしています。
- パンデミックと気候変動という2つの世界的な要因により、アジア全域で廃棄物管理・処理への関心が高まっています。
- 自治体の廃棄物対策に加え、企業や行政は医療廃棄物や災害廃棄物に伴う新たなリスクについて協議しています。
- 奨励金や罰金、最新技術を駆使した取り組みなど、さまざまな解決策が検討されています。
- 廃棄物管理対策の重要性が高まる中、アジア各地で問題解決に注力するベンチャー企業のネットワークが広がっています。
中国の研究者が最近発表した報告書によると、COVID-19の発生以来26,000トン以上の医療用プラスチック廃棄物が地球の海を汚染していることが判明しました。汚染の大部分はアジアに集中しています。オーストラリアにおいては、気候変動が原因とされる最近の洪水からの復興に18億7千万米ドル以上の税金がかかると予想されています。
新しい時代と昔からの問題
気候変動やパンデミックの影響がますます深刻化する中、 アジア地域における廃棄物管理部門は新たな課題に直面しています。現在の感染拡大への対策として、中国吉林省は医療廃棄物の処理能力を520トン増強しました。インドネシアでは、地域代表者会議の副議長が、COVID-19に向けた医療廃棄物計画を策定するよう政府に要請しています。
廃棄物に伴うリスクは多方面に影響を及ぼします。環境への影響だけでなく、COVID-19の廃棄物が不適切に処理された場合、その地域社会に健康上の害を及ぼす可能性があるのです。その一方で、災害による廃棄物は、病気の蔓延や地域のインフラに大きな影響を与える恐れがあります。過去の例として、2021年に起きたソマリアの洪水では、数千軒の家屋が倒壊し、コレラが蔓延する事態となりました。
気候変動とパンデミックの課題は、アジアの廃棄物管理部門が直面している既存の問題と絡み合い、さらに複雑になっています。タイでは最近、余剰な廃棄物を取り締まるために、政府省庁が首都にある20の違法埋立地に対する強制捜査を実施しました。また、インドのケララ州などの都市では、1日に排出される廃棄物の半分しか処理することができないことから、現在30万トンのレガシー廃棄物を抱えている状態です。
さまざまな解決策
政府や各団体は、さまざまな解決策を模索しています。国連は世界的なプラスチック汚染の危機に対して、加盟国に法的な責任を負わせる決議を採択しています。アジアにおいては、ある非営利団体が、医療従事者が医療廃棄物を特定、追跡、最小化できるツールを開発しました。
また、組織や個人からの協力を得るために、各地域においてもさまざまな取り組みが行われています。シンガポール政府は、今後6年間で3,000人の廃棄物管理労働者の給与を段階的に引き上げると発表しました。ニュージーランドでは、地方自治体がゴミの投棄料金を引き上げています。マレーシアの地方政府は、これとは対照的に、廃棄物に対して市民に報酬を支払っています。
ベンチャー企業の拡大
厳しい状況が続く中、新しい試みを行うベンチャー企業が続々と誕生しています。オーストラリアのある企業は、プラスチックを無害な成分に分解する酵素を製造・販売するために450万米ドルの資金を確保しました。インドでは、廃棄物管理プロセスを改善するための、人工知能とIoT(モノのインターネット)を活用した新しいプログラムの特許が最近申請されました。
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この報告書はウェーバー・シャンドウィックのインサイト&情報チーム(シンガポール)が作成したものです。
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