
アジア太平洋地域における2022年のリテール体験
ウェーバー・シャンドウィックのAPAC Intelligence Bulletin(アジア太平洋地域情報速報)では、毎週、アジア太平洋地域の産業分野や市場を方向付ける重要な動向をお伝えしています。
- インフレ率の上昇という圧力と、客足の回復という恩恵の狭間で、アジアの小売業界は不安定な立場に置かれています。
- 今後の混乱を見越して、小売企業は消費者との強固な関係を育むために多額の投資を行っています。
- 各ブランドは、ツアーやポップアップストア、サブスクリプションモデルやメタバース空間といった、さまざまな体験型の戦略によって顧客との関係強化を図っています。
- 大手IT企業によると、消費者情報に関する政策が2023年に大きく変わるとされていることから、小売ブランドにとって、顧客との体験や関係を構築することが今後さらに重要になると予想されています。
長年にわたるパンデミックの苦境を経て、アジア太平洋地域の小売業は復活の兆しを見せています。例えば、インドの大手小売ブランドは、2022年に1日平均9店舗を新たにオープンさせたとのことです。しかし、情勢不安の高まりにより、この地域の小売業は再び厳しい状況に立たされる懸念があります。
起こりうる混乱
ニュージーランドでは、消費者調査の結果、5人に1人が今後3~6ヶ月の間にインフレ対策として小売支出を控える意向であると回答しています。香港特別行政区とインドでは、多数の小売店の閉鎖に伴い、商業施設の所有者たちが顧客ポートフォリオの見直しを図っています。日本の大手国際小売企業は、従来の100円均一という価格を引き上げたことで、オーストラリアやシンガポールで反感を買っています。
これを受けて、アジア太平洋地域の小売企業は、顧客との関係を構築・強化するための投資を積極的に進めています。2020年の調査では、混乱の時代においても、世界の消費者の80%が、ブランドのサービスは商品と同じくらい重要であると考えていることがわかりました。2021年の世界的なトレンド分析では、小売企業の60%が、記憶に残るエンゲージメント体験を通じて競合との差別化を図ろうとしていることが明らかになりました。
さまざまなアプローチ
小売業者にとっての最優先事項は一貫しているものの、各ブランドはさまざまな戦略を模索しています。マレーシアでは、ヘルス&ビューティブランドが初のドライブスルー店舗をオープンしました。中国の多国籍企業は、毎年開催される「618ショッピング・フェスティバル」 に向けて、メタバース型のショッピングモールの開発を先導しています。また、タイの会社では、商品やブランドを自動販売機で販売する試みが行われています。
ニューリテールやフィジタルリアリティといったこれまでの小売トレンドと同様に、この部門の試みの多くは、オンラインと対面式の小売体験を融合させることが根底にあります。あるグローバルな消費者向け技術企業は、近々、インド北東部全域で、改装したトラックを活用したポップアップ・リテール体験を展開する予定です。オーストラリアのドラッグストアのネットワークは、サプライヤーが直接顧客にサービスを提供できるようなオウンドメディア・プラットフォームを開発しました。
長期的なブランド・ロイヤルティ
多くの小売ブラントにとって大きなメリットになるのは、 2022年までに消費者のロイヤルティと関係性を確保することです。大手IT系企業の多くが、2023年に第三者によるクッキー(Cookie)の使用を中止し、データのプライバシーポリシーを大幅に更新する方針であることから、パーソナライズされた体験を提供する既存の手段の多くは、近いうちに中断される可能性があります。そのような状況においては、消費者との持続的な関係性というものは特に貴重なものになるかもしれません。
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この報告書はウェーバー・シャンドウィックのインサイト&情報チーム(シンガポール)が作成したものです。
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