アジア太平洋地域における暗号通貨
ウェーバー・シャンドウィックの APAC Intelligence Bulletin (アジア太平洋地域情報速報)では、毎週、アジア太平洋地域の産業分野や市場を方向付ける重要な動向をお伝えしています。
- 2021年の規制強化に続き、暗号通貨市場はアジア全域で不安定な状態を見せています。
- これまで数々の政府が暗号通貨を支援する意向を示してきた一方、2022年からはより厳しい法律が定められています。
- 暗号通貨に起因する詐欺や犯罪件数の増加と、迫り来る「暗号資産の冬(Crypto Winter)」 の懸念が、社会的信用を損ねているという見方も。
- 一方で、暗号通貨と密接な関連を持つ非代替性トークン(NFT)市場は、暗号通貨に対する冷え込みの影響をほとんど受けていない模様。
2021年後半、暗号通貨市場は、香港特別行政区、中国、シンガポール、韓国で規制が強化されました。中国政府が暗号通貨を取り締まった結果、世界のビットコイン取引に占める中国のシェアは約半年で90%から10%に縮小されました。アジア全域で、暗号通貨に対する意識が変わりつつあるようです。
見解の修正
アジアの多くの政府機関は、これまで暗号通貨部門の支援や交渉に前向きでしたが、ここ数カ月で各国の議員がより厳格な政策を検討しています。インド準備銀行の副総裁は、暗号通貨を全面的に禁止することを公に提唱しています。また、マレーシアの財務大臣代理は最近、暗号通貨を法定通貨として認定すべきではないと主張しました。
暗号通貨を支援する政府も存続しています。タイ政府は、暗号通貨とデジタル通貨の取引に対する標準的な課税を免除することに合意したばかりです。最近の調査では、タイは世界で最も暗号通貨資産を持つ国民の割合が高く、タイ国民の5分の1が暗号通貨を所有・取引していると回答しています。しかし、サポート体制の整った市場においても、各国政府は規制の強化を提唱しています。
暗号通貨関連の犯罪とその影響
暗号通貨詐欺やサイバー犯罪の被害報告は、パンデミック期間中、増加し続けています。最近では、世界中の暗号通貨「クジラ(*機関投資家など莫大な資産を運用する大口投資家)」の4%がサイバー犯罪によって保有通貨を確保していたという報告もあります。オーストラリアの清算機関では、ある暗号通貨の取引所は最大3年間も破綻していた状態で取引を続けており、その結果、数百万ドルの詐欺的な取引が行われていた可能性があることが明らかにされています。
暗号通貨部門に対する立法機関の姿勢が変化しつつあるのは、このような詐欺事件の影響が深刻化していることが原因だという見方もあります。さらに、ロシアのウクライナ侵攻とそれに伴うデジタル/経済制裁により、世界中で暗号通貨の価値が長期的に下落する「暗号の冬」が到来する可能性があるという報告も、暗号通貨への投資に対する疑念を助長しています。
NFTという選択肢
非代替性トークン(NFT)は、技術と考え方において暗号通貨と通じるものがある一方で、暗号通貨に対する意識の冷え込みは、非代替性トークン(NFT)に対する懐疑的な見方にはまだ至っていないようです。オーストラリアのNFTスタートアップ企業は最近、シリーズCラウンドで2億米ドルの資金を確保した後、25億米ドルの評価額を受けました。また、マレーシアの大手NFT取引所では、2021年8月以降、120万米ドル相当以上の取引が行われています。
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この報告書はウェーバー・シャンドウィックのインサイト&情報チーム(シンガポール)が作成したものです。
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