アジア太平洋地域におけるエネルギー問題の影響
ウェーバー・シャンドウィックのAPAC Intelligence Bulletin(アジア太平洋地域情報速報)では、毎週、アジア太平洋地域の産業分野や市場を方向付ける重要な動向をお伝えしています。
- 激変が続く中、アジア地域の大半がエネルギー供給の維持に苦労しており、多くのビジネス部門が困難に直面しています。
- 最も深刻な影響を受けているのは、農業、自動車産業、航空業の部門です。
- しかし、その影響は広範囲に及び、一部の市場においては医療や倉庫、運輸部門にも及んでいます。
- どの産業も、より持続可能なエネルギーを活用した解決策への移行を早めることで、この状況の打破を試みています。
日本では、政府から電力不足の警告が出され、6月の最終週には企業に対して最小限の電力しか使わないようにという指示が出されました。その前の週には、オーストラリア政府が電力の供給を保証するために、同国の東海岸の送電網を一時的に掌握するという事態が起きました。インドでは、度重なる停電に対して、抗議する農民が政府機関の門前に60個の電力メーターを投棄したとのことです。
重くのしかかるコスト
ロシア・ウクライナ戦争、インフレ、気候変動などの影響により、アジア地域のエネルギー部門の混乱は、アジアの多くの民間企業にも影響を及ぼしつつあります。例を挙げると、航空業界は燃料費の高騰により大きな影響を受けています。オーストラリア、ニュージーランド、インド、マレーシアの大手航空会社では、大幅な運賃の値上げとフライトのキャンセルが相次いでいます。
また、農業の分野も同様に、地域全体で複雑な混乱に見舞われています。近年に何度か起きた停電の影響で、農家が再生可能エネルギーに移行した結果、インドでは太陽光発電の水ポンプの価格が16%も高騰したとのことです。オーストラリアの全国農業者連盟によると、電気料金の上昇は同国の酪農や園芸産業に大きな打撃を与えると予想されています。
その一方で、自動車メーカーは、地域全体で急速に進む電気自動車へのシフトに直面しています。シンガポールでは、2022年の新車登録台数の約8%が電気自動車でした。中国では、5月の1ヶ月間で40万台の電気自動車が売却されました。オーストラリアでは、今年最初の5ヶ月間で電気自動車の販売台数が400%も増加しました。インド最大の電力会社は、3つの都市に電気自動車用の充電インフラを整備する予定です。
さまざまな部門への影響
部門によっては、ある特定の市場のみにおいて困難な状況が続いているケースもあります。燃料の高騰により輸出が大幅に制限される中、シンガポールの倉庫業界は収容能力の限界に近づいており、緩和の見込みもほとんどありません。オーストラリアとインドの医療業界は、停電の間、最低限の治療しか提供できない状況に追い込まれています。タイでは、民間のバス会社がディーゼルのコスト上昇に直面し、サービス縮小を余儀なくされています。
共通するアプローチ
市場や課題に関わらず、多くの部門は再生可能エネルギーへの投資を通じて、今後の混乱を回避しようと試みています。例えば、インドとフィリピンでは、多くの自動車工場が、ソーラーパネルや資源リサイクル工程などの、サステナビリティのための新たな取り組みを開始しました。インド、マレーシア、オーストラリアの航空会社や空港は、再生可能燃料への移行を発表しています。
関連記事
石油化学産業とアジア
Petrochemicals in Asia
ホスピタリティ産業とアジア太平洋地域
Hospitality & APAC
アジアにおける金属&鉱物
Metals & Minerals in Asia
この報告書はウェーバー・シャンドウィックのインサイト&情報チーム(シンガポール)が作成したものです。
アジア太平洋地域の様々な産業分野に関する定期的な情報については、ウェーバー・シャンドウィックのアジア太平洋地域情報サービスをご購読くださいsubscribe to Weber Shandwick’s APAC Intelligence alerts。
ウェーバー・シャンドウィックのAPAC情報通信は、アジア太平洋地域の様々な産業・市場・動向に関する最新情報を定期的にお届けしています。ご購読はこちらからSubscribe here.