アジア太平洋における エンターテイメント
ウェーバー・シャンドウィックのAPAC Intelligence Bulletin(アジア太平洋地域情報速報)では、毎週、アジア太平洋地域の産業分野や市場を方向付ける重要な動向をお伝えしています。
- アジア地域社会が徐々に回復していく中、アジアのエンターテイメント部門は優先順位の見直しに取り組んでいます。
- パンデミックという不確実な状況によって、対面式とデジタル式のエンターテイメントとの葛藤がさらに深刻化しています。
- このような不確実性に対処するため、各関係者は業界における支援、規制、安全の確保に向けた投資を進めています。
- 今後の展望は不透明であるものの、アジアの複数の市場がソフトパワーの強化に新たに取り組んでおり、それに伴いエンターテイメント市場への投資も増加傾向にあります。
マカオ特別行政区は7月、コロナの蔓延に再度対処するため、区内のカジノを全て一時的に閉鎖することを発表しました。最近の調査では、インドでビデオストリーミングを利用するユーザーのうち、無料から有料のコンテンツへの移行に関心があるのは5人に1人以下であることが判明しています。アジア太平洋地域全体で、エンターテイメント部門は優先順位の複雑な変化に直面しています。
対面式とデジタル式
2022年の初めには、多くの人々がエンターテイメント業界においては通常の状態に戻り、自由に旅行ができ、対面式のイベントが行われると予想していました。しかし、コロナをめぐる規制は緩和されたものの、アジア太平洋地域のエンターテイメント部門の現在の形態は不透明な部分が多くあります。従来の形式のイベントや会場に足を運ぶ観客の水準は、パンデミック以前と同程度に戻りつつありますが、エンターテイメント部門における優先順位は依然として不明瞭なままです。
オーストラリアのエンターテイメント部門は2021年に10%以上の成長を遂げ、2022年を通して継続的な成長が見込まれています。また、複数の州のフェスティバルにおいて、2022年に記録的な入場者数を達成しています。しかし、最近の報告書によると、この国のエンターテイメントの成長に大きく貢献しているのは、オンラインとビデオゲームのコンテンツであることが判明しました。このような動向は、ゲーム市場の価値が2026年まで上昇すると予想されている、フィリピンの市場とも一致しています。
成長への取り組み
これを受けて、政府、各ブランド、業界の利害関係者は、この分野にさらなる安全性を確保すべく取り組んできました。一部の市場では、会場の支援や創設という形で、このような取り組みが行われています。シンガポール政府は最近、民間のスタジアムとスポーツ施設の買収を発表し、一般市民がスポーツイベントに気軽に参加できるようにしました。また、中国では、日本のシェフ団体による会社が料理のテーマパークを作るという計画を発表しています。
他の市場では、新たな法律の制定という形で支援が行われています。マレーシアの住宅・地方自治省は現在、業界の成長を支援する新たなエンターテイメント税についての関係者間の交渉を統括しています。またインド政府は、エンターテイメント産業で働く児童の保護に関する新たな法律を制定しました。タイでは、国会議員がギャンブル禁止法の緩和を提言し、カジノの運営が可能になりました。
新たなソフトパワー
この分野を取り巻く不確実性と支援策は、複数の物議を醸しています。例えば、オーストラリアのギャンブルやテーマパーク事業に関する調査では、野生動物の保護にあてられたオーストラリア政府の資金が、代わりに、あるテーマパークのジェットコースターの新設に使われていたことが明らかになり、ニュージーランドの企業も汚職聴取にかけられる可能性があるとのことです。
しかし、この分野の成長は今後も継続が見込まれています。中国、マレーシア、インド、タイの各政府は最近、市場の成長を促す上で、ソフトパワーと文化的なコンテンツの重要性を強調し、新たな投資によってエンターテイメント部門の回復を支援しています。マレーシアでは、政府機関が業界を強化するために、マレーシアの歴史を紹介する映画を優先的に上映する可能性を示唆しました。
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この報告書はウェーバー・シャンドウィックのインサイト&情報チーム(シンガポール)が作成したものです。
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