ホスピタリティ産業とアジア太平洋地域
ウェーバー・シャンドウィックの APAC Intelligence Bulletin (アジア太平洋地域情報速報)では、毎週、アジア太平洋地域の産業分野や市場を方向付ける重要な動向をお伝えしています。
- アジア太平洋地域では、COVID-19対策や国境規制が緩和され、多くのホスピタリティ産業が復活の兆しを見せています。
- しかし、実際のサービスや利用者数などが数年にわたり制限されてきたため、多くの企業が現在も苦境に立たされており、さらなる支援を必要としています。
- 主な課題の一つは人材の確保で、経験豊富な人材の不足や働き手の不足が、多くの市場に影響を及ぼしています。
- このような苦境と好機が混在する中で、現市場に潜むリスクに耐えられる大企業が主に投資を行っています。
パンデミックは依然として中国などの地域において何千人もの人々に影響を及ぼしている一方、この1ヶ月間でシンガポール、オーストラリア、 ニュージーランド、日本、韓国では規制緩和が行われました。国境の規制が緩和され、地域全体にワクチンが普及したことで、アジアの多くのホスピタリティ部門は復活態勢にあります。
復興への課題
復興はさまざまな観点から難しいものになるでしょう。パンデミックの数年間で、アジア太平洋地域のホスピタリティ産業は、多大な事業損失、従業員の離職、企業の倒産へと追い込まれました。オーストラリアでは、規制緩和を受けて、接客業の人材を海外から誘致するために数百万ドルの広告キャンペーンが行われました。シンガポールでは、2021年の外国人接客業従事者の数は過去10年間で最低を記録しています。
大量退職とパンデミックによって、職場に関する議論が活発化し、ホスピタリティ産業の職場環境に対しても厳しい目が向けられるようになりました。ニュージーランドにおける最近の調査では、接客業従事者の約半数が職場でハラスメントを受けたことがあり、報告されたハラスメントの40%は管理職や監督者が原因であることが判明しています。
インドでは、政府や団体がより総合的な支援を通じて産業の再活性化に取り組んでいます。インド政府はホスピタリティ産業への貸付限度額を拡大し、同産業に従事する全企業に対して電力料金の引き下げを行いました。また、インドの大手ビジネス支援団体は、世界で最も歴史のあるホテル専門学校と連携し、インド人労働者のスキルアップを目的とした18ヶ月の教育プログラムを企画しています。
その一方で、規制が十分に緩和されるまで様子を窺っている市場も一部あります。タイ政府は現在、最近開催された祭りの影響で、1日あたり10万人のCOVID-19感染者を見込んでいます。タイ政府は7月1日に規制を解除し、エンデミック(日常的に流行する感染症)を宣言する予定ですが、観光事業者や関連企業は、このような対策は産業にさらなる悪影響を及ぼすと批判しています。
投資を牽引する企業
多くのビジネスが多大なリスクと機会を抱える中、アジア地域のホテル産業復興に向けた投資は、主に金融リスクを限定できる大手ブランドによって牽引されています。世界最大のホテルチェーンは、今後2~3年の間にインドで約29軒のホテルを新規オープンする計画を表明しました。また、ある世界的なホテルチェーンは、2022年に京都に新たな拠点をオープンさせる予定です。
オーストラリアでは、現在、ホスピタリティのフランチャイズやブランドへの投資から、郊外や地方にある、レストランと宿泊施設が併設されたパブへの投資に移行しています。
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この報告書はウェーバー・シャンドウィックのインサイト&情報チーム(シンガポール)が作成したものです。
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