2022年の物流事情
ウェーバー・シャンドウィックのAPAC Intelligence Bulletin(アジア太平洋地域情報速報)では、毎週、アジア太平洋地域の産業分野や市場を方向付ける重要な動向をお伝えしています。
- パンデミックにより多大な影響を受けたアジア地域の物流部門は、期待されたほどの回復には至っていない状況。
- ロシア・ウクライナ戦争や世界的な食糧不足というさらなる課題に直面し、企業や政府は新たなサプライチェーンの解決策を優先的に検討しています。
- 政府は国内資源や海外との連携に投資しています。
- その一方で、メーカーは技術的な解決策や製造・流通における代替アプローチを追求しています。
- 現在の複雑な問題を解決する一方、人材・気候・汚職といった新たな障害にも効果的に対処することが物流部門の課題となっています。
専門家は当初、アジア太平洋地域の物流市場は2022年までには安定化すると予想していたものの、ロシア・ウクライナ戦争や世界的な食糧不足をめぐる課題が続き、パンデミック時代の混乱は長期化しています。
多様なアプローチ
上海のロックダウンが解除され、製造業と貨物輸送が再開されたことで現在の状況は緩和されましたが、政府やメーカーはこの産業界の課題に対して、より長期的な解決策を積極的に模索し続けています。
また、各国の政府においては、国内投資や海外との提携が進められています。中国政府はミャンマー、タイ、ラオスと貨物列車の輸送ネットワークを構築中です。マレーシア政府はタイと高速鉄道のネットワークを構築することを計画しています。ニュージーランドでは、政府が民間企業と協力して、国内における新たな航路の供給ルートや港の整備を進めています。インド政府は、主要都市圏に5つのマルチモーダル輸送設備を建設する計画です。
民間企業においては、技術革新と構造改革が優先されています。インドのベンチャー企業は、ドライバーと中小企業をつなぐことで、トラックドライバーの賃金と雇用の安定を強化すると主張しており、最近、同社のサービス拡大に向けて1400万米ドルの投資資金を確保しました。シンガポールでは、民間企業が政府と協力して、企業がサプライチェーンの問題を一括して特定できるようなデータ共有プラットフォームの開設を進めています。
課題と機会
この分野が直面する問題は複雑です。既存の課題に対する解決策が見え始めても、各国の動向や発展がさらなる混乱をもたらしています。例を挙げると、韓国で発生したトラックドライバーたちのストライキは、現在、アジア太平洋地域の複数の市場に影響を及ぼすと予想されています。一方、中国では、製造業が最も盛んな地域に洪水警報が発令されたことにより、最近ロックダウンが解除されたばかりの上海などに再び混乱が起こる恐れもあります。
しかし、この業界のトップの多くは、今後の障害を未然に防ぐために、すでに対策を講じているようです。フィリピン、日本、インド、マレーシアの大手物流・製造メーカーは最近、気候変動対策に向けた新たな取り組みを表明し、ある企業では1万8000台の電気自動車を新たに購入しています。フィリピンとベトナムの物流企業が違法企業との繋がりがあると告発される中、ニュージーランド政府はサプライチェーンにおける倫理的犯罪を取り締まるための法案を策定しています。
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この報告書はウェーバー・シャンドウィックのインサイト&情報チーム(シンガポール)が作成したものです。
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