アジア太平洋地域の製造業
ウェーバー・シャンドウィックのAPAC Intelligence Bulletin(アジア太平洋地域情報速報)では、毎週、アジア太平洋地域の産業分野や市場を方向付ける重要な動向をお伝えしています。
- 継続的な供給不足により、アジアでは多くの製造メーカーが優先順位の見直しを迫られています。
- その結果、各国の市場で予期せぬ成果が見られたり、新たな課題が浮上しています。
- 製造業における成長は、主に電気自動車市場の拡大と世界的なチップ不足が要因となっています。
- 成長する市場も低迷する市場も、供給面での様々な問題に取り組み続けているのが現状です。
ロシア・ウクライナ戦争や中国でのロックダウン、不安定な地政学的環境などが重なり、アジアの供給ラインは複雑な状況が続いています。新型コロナウイルス感染症の発生以来、多くの企業が製造拠点の多様化を図ってきました。そして2022年、アジア地域の製造業にとって、新たな地盤がようやく整い始めています。
引き直された地図
この変化の主な恩恵を受けているのは、現時点ではインドと東南アジアです。インドの製造業は、9ヵ月にわたって継続的な成長を遂げています。シンガポールの製造部門は、パンデミック以降、毎年、市場への新規参入企業が増加しているとの報告もあります。マレーシアでは、ジョホール州などで、過去1年間に製造業への投資が30%増加したとのことです。
専門家の一部では、インドや東南アジアへの投資拡大は、ロックダウンや、地政学的な懸念による中国からの「大脱出」が背景にあると考えられています。2022年4月、中国の工業部門は2020年4月以来の減少となりました。この部門では、5月と6月にも引き続き減少が報告されています。技術系多国籍企業の中には、中国の製造拠点をベトナムに移す可能性を示唆する企業も見られます。
電気自動車の台頭
この部門の成長は、電気自動車市場の成長と、継続する世界的なチップ不足が大きな要因となっています。2022年6月には、複数の自動車関連のグローバル企業がインドで電気自動車の製造工場を新たに開設しています。
普遍的な課題
しかし、この市場における成長と課題には、依然として、さまざまな面において供給が一定でないという問題があります。不足しているのは人材だという市場もあります。最近の報告書によると、オーストラリアの製造業は過去50年間で最大の人材不足に直面しているとのことです。インドネシアは最近、両国のパートナーシップの一環として、韓国の製造業を支援するため、376人の労働者を韓国に派遣しました。
他の市場では、電力の安定供給や原料の供給、そして需要をめぐる問題が起きています。シンガポール政府は最近、製造業者の電力コストを緩和するための新しい政策を打ち出しました。ニュージーランドの企業は、同国の主要材料である「ジブ(gib)」が不足しているため、オーストラリアから石膏ボードを輸入しなければならない状況です。また、中国のロックダウンにより需要が大幅に減少したため、日本の鉄鋼価格は大幅に低下しています。
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この報告書はウェーバー・シャンドウィックのインサイト&情報チーム(シンガポール)が作成したものです。
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