公衆衛生とアジア太平洋地域
ウェーバー・シャンドウィックのAPAC Intelligence Bulletin(アジア太平洋地域情報速報)では、毎週、アジア太平洋地域の産業分野や市場を方向付ける重要な動向をお伝えしています。
- 新型コロナウィルスの感染拡大が再びアジア全域で増加し、最近ではサル痘の世界的な緊急事態が宣言されたことで、アジアの公衆衛生部門は複数の優先課題を調整する必要性に迫られています。
- 各国政府は概ねコロナ対策の延長や再開に消極的であるものの、感染者数の増加に対する懸念から地域全体で見直しが行われています。
- 多数の国が、深刻な人員不足や供給不足、また公衆衛生をめぐる違法行為の多発に直面しています。
- 地域全体では、サル痘の感染拡大防止に向けて、慎重な監視体制や戦略的な介入が期待されていますが、一部の国では、現状を問わず、より強靭な公衆衛生部門の構築に取り組んでいます。
すでに大きな負担を強いられているアジアの公衆衛生部門は、複雑な優先事項の対応に追われています。7月を通して、タイ、日本、オーストラリア、香港特別行政区、シンガポール、韓国、インドネシア、ニュージーランド、フィリピンにおけるコロナの1日の感染者数は急増しています。また、世界保健機関(WHO)は、新たにサル痘を世界的な医療緊急事態と位置づけています。
リスクとのバランス
感染者数が急増する以前は、多くの国でコロナの規制や対策が撤廃される方針が打ち出されていました。例を挙げると、オーストラリア政府は、コロナに感染した職員らに対する休職金の支払いを7月で終了するという確約をしていましたが、それを最近、撤回しています。感染率と入院率が再び増加していることから、諸国の政府は、既存の取り組みと潜在的なリスクとを比較検討する必要に迫られています。
タイ政府は、当初7月末までとしていた緊急事態宣言を再度延長し、発令以来19回目の延長措置となっています。日本では、東京都がコロナの警戒レベルを再び最高レベルまで引き上げています。香港特別行政区政府は現在、渡航者の隔離要件を緩和する決定を検討しており、2週間以内に正式な結果が出る予定です。
疲弊した公衆衛生部門
アジア地域の公衆衛生部門の多くは、すでに大きな負担を抱えているのが現状です。ニュージーランドでは、病院の人材不足を補うために看護学生が違法に採用されており、採用された学生にはスーパーの商品券が給与として支払われていました。シンガポールでは、全国的な献血イベントが行われ、記録的な献血者数となったにもかかわらず、血液の供給が致命的なレベルまで低下しています。インドでは、公衆衛生当局に対する汚職捜査が劇的に増加しているとのことです。
将来を見据えた計画
アジアの公衆衛生部門は現時点で、世界的なサル痘の緊急事態に対し、冷静さは失わず万全な対策を取る姿勢を強調しています。シンガポール保健省は、世界保健機関が推奨する対策の大半は、緊急事態宣言以前からシンガポールでは既に実施されていたと発表しました。インドネシアの保健当局も同様に、WHOの推奨を徹底すると表明しています。
一方で、アジア地域の一部では、公衆衛生に対するより長期的な支援と開発に投資している国もあります。インド政府は、新たなサル痘ワクチンの開発を積極的に優先させるとともに、公的医療の負担を軽減するため、広範囲にわたる数々の政策を実施しています。その中には、医療研修への支援強化や、病院の治療負担を軽減するための多数の診療所の開設なども含まれています。
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この報告書はウェーバー・シャンドウィックのインサイト&情報チーム(シンガポール)が作成したものです。
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