アジアにおける職場復帰
ウェーバー・シャンドウィックのAPAC Intelligence Bulletin(アジア太平洋地域情報速報)では、毎週、アジア太平洋地域の産業分野や市場を方向付ける重要な動向をお伝えしています。
- アジア全域では企業が従業員に従来の職場への復帰を勧めています。
- 従業員の多くは引き続き在宅勤務やハイブリッド型勤務を希望しています。
- これに対し、企業や政府は従業員の職場復帰を奨励するためのインセンティブを提供しています。
- 職場というものが進化し続ける中、各所で新たな機会とリスクが発生しつつあります。
アジア諸国の市場においてパンデミックの規制緩和が進み、多くの企業が従来の職場環境を再び導入し始めています。インドのホステルやIT業界の代表者たちは、近い将来、労働者が職場に戻らなければ、業界が崩壊すると警告しています。シンガポール政府は、集会に関する制限をすべて撤廃し、職場においてパンデミック前の活動を再開することを奨励しています。
復帰に消極的な従業員たち
しかし、従来の職場への復帰に対する従業員の姿勢は依然として複雑です。最近マレーシアで行われた調査では、94%の社員が勤務形態に柔軟性を求めていることがわかりました。日本では80%の社員が在宅勤務の継続を希望しています。インドではハイブリッド型の勤務制度を導入したところ、ある世界有数のIT企業が複数の離職者に見舞われる事態となりました。
アジア諸国の従業員や調査によって度々挙げられる、在宅勤務の主な魅力は安全性です。インドでは、調査した従業員の90%が社内でCOVID-19に感染することを懸念しています。最近行われたシンガポールでの調査では、公共交通機関が混雑しておらず、感染の可能性が低いのであれば、従業員はより安心してオフィスで仕事をすることができると回答しています。
創意工夫を凝らしたインセンティブ
これに対し、企業や政府は職場復帰を奨励するためにさまざまなアプローチを試みています。タイ政府は、企業に対する職場の衛生基準を新たに定め、雇用主が従業員の安全を確保する義務を強調しています。
フィリピン政府は、従業員が勤務時間の70%以上を現場で過ごしている企業に対して、財政的な優遇措置を設けています。
さらに具体的なアプローチも見られます。あるグローバルIT企業は、無料のスクーターを提供することで、従業員をオフィスに復帰させたいと考えています。オーストラリアでは、住居の内装やレイアウトを商業用不動産と組み合わせた「レジマーシャル(Residential + Commercial)」な設計の職場にすることが推奨されています。マレーシアの雇用主擁護団体は、リモート職員の賃金をオフィス職員より低くすることを提案しています。
浮上する機会やリスク
職場復帰についての議論がアジア地域で続けられている中、職場環境の変革は新たなビジネスチャンスとリスクをもたらしています。中小企業においては、リモートワークの導入により、サイバー犯罪やサイバー攻撃が増加しています。その一方で、インドやニュージーランドのスタートアップ企業で、ハイブリッド型の職場や従業員のウェルビーイング(幸福)を専門としている企業は、このような状況から多額の投資収益を得ているようです。
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この報告書はウェーバー・シャンドウィックのインサイト&情報チーム(シンガポール)が作成したものです。
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