二輪車産業とアジア太平洋地域
ウェーバー・シャンドウィックのAPAC Intelligence Bulletin(アジア太平洋地域情報速報)では、毎週、アジア太平洋地域の産業分野や市場を方向付ける重要な動向をお伝えしています。
- 従来の自動車市場が苦戦する中、アジア地域の二輪車産業は独自の変革期を迎えています。
- 二輪車に対する全般的な人気の高まりとともに、各国の市場は電動スクーターや電動バイクのようなハイブリッド型の交通手段に順応しつつあります。
- 各国の立法機関は、自国市場に適切な安全対策を講じるため、日々進化する二輪車産業に遅れを取らないよう懸命に努力しています。
11月、中国の自動車販売台数は前年同月比9.1%減少となり、7ヵ月連続のマイナスとなりました。また、インドでは11月の乗用車の販売台数は前年同月比で19.4%減少しています。継続するチップ不足、供給ラインの複雑化、市場特有のさまざまな問題が続く中、アジアの自動車産業は苦境に立たされています。
二輪車の台頭
しかし、各国の自動車販売台数が同様の減少傾向にある一方で、この地域の多くの市場では、二輪車市場に新たな関心と変革が見られます。先月には、日本の自動車多国籍企業が、競争の激しいインド市場で新しいスクーターの発売を開始しました。また、中国に拠点を置く「ロボット車両」のベンチャー企業は、2022年に米国で製造を開始する計画を発表しています。
アジアでは交通渋滞や、公共交通機関による新型コロナウイルス感染への懸念が高まっていることに加え、単身層が世界的に見ても多いため、この1年半で二輪車移動が人気を博しています。2021年、世界大手の中型二輪車メーカーは日本、シンガポール、フィリピンに新たな旗艦店をオープンしました。
電気自動車の成長
この分野への関心の高まりは、アジア地域における電気自動車やカーボンニュートラルな自動車の人気が高まっていることが背景にあります。オーストラリアなどの市場では、2021年11月の電気自動車の購入台数が200%以上増加しました。また、タイ政府は、2035年までに国内に12,000基の充電ステーションと120万台の電気自動車を導入することを目標としています。
カーボンニュートラルを目指す自動車メーカーにとって、二輪車市場は重要な位置を占めています。日本最大級の二輪車メーカー2社は、他の日系自動車多国籍企業3社と連携して、水素燃料エンジンの開発に取り組んでいます。あるインドのベンチャー企業は、インドのタミル・ナードゥ州に電動バイクの製造工場を設立するために、3,200万米ドルを獲得たとのことです。
安全第一
二輪車への関心が高まるにつれ、アジア太平洋地域の各国政府は新たな法規制の必要性に迫られています。現在、ベトナムのハノイには約560万台の二輪車が走っていますが、二酸化炭素排出量を削減するため、2025年から首都の全域で二輪車が禁止されることになっています。マレーシア、タイ、オーストラリアでは、二輪車をめぐる新たな法整備が検討されています。
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この報告書はウェーバー・シャンドウィックのインサイト&情報チーム(シンガポール)が作成したものです。
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