オーストラリアとアジア太平洋地域
ウェーバー・シャンドウィックの APAC Intelligence Bulletin (アジア太平洋地域情報速報)では、毎週、アジア太平洋地域の産業分野や市場を方向付ける重要な動向をお伝えしています。
- オーストラリア政府と中国政府の 緊張した関係は依然として続いており、オーストラリアの多くの産業部門に変化をもたらしています。
- これに対し、オーストラリア政府は、南アジアや東南アジアとの外交や貿易関係に積極的な投資を行っています。
- ロシア・ウクライナ危機はオーストラリアの鉱業部門にとってビジネスチャンスである一方、オーストラリアの東海岸では壊滅的な気候変動が起きています。
- オーストラリアでは数カ月後に国政選挙が予定されており、8月までに新政権が誕生するとの見通しが大勢を占めています。
ロシア・ウクライナ危機の影響で、中国とオーストラリアの政府間の緊張状態が一層高まっています。2020年以降、中国から厳しい貿易制裁を受けている状況下で、オーストラリア首相は中国政府のウクライナに対する姿勢を公に批判し、中国がロシアへの軍事支援を拡大した場合には制裁措置を講じるとしています。
新たな取引先の開拓
2020年以前、中国はオーストラリアの輸出の40%近くを担っていました。制裁に対抗するべく、オーストラリアの輸出業者は、農業、エネルギー、石油化学などの分野で、南アジアと東南アジア全域で新たな関係を築きました。当時、この新たな貿易関係により、制裁初年度のオーストラリア輸出額の減収はわずか0.25%にとどまりました。
中国とオーストラリアの関係が依然として複雑な中、オーストラリア政府は南アジアと東南アジア全域との連携を強めています。インドとオーストラリアの間では、暫定的なFTA(自由貿易協定)が近日中に発表される予定です。オーストラリアの男子プロクリケットチームは、最近、24年ぶりにパキスタンへ遠征しました。さらに、オーストラリア政府はラオスの高等教育への資金援助を延長したばかりでもあります。
複雑な情勢と気候変動
ロシア・ウクライナ危機により、オーストラリアの鉱業部門には新たなビジネスチャンスが到来しています。ロシアが世界の石油・ガス市場から排除されたため、オーストラリアの輸出業者が不足分の一部を補うことが期待されています。日本政府とオーストラリアの供給業者との間ではすでに協議が行われたとの報告もあります。また、2月に日豪両政府は、制裁により石油が不足した場合、互いに追加供給することを約束しています。
しかし、オーストラリアの東海岸は歴史的な洪水被害が続いており、化石燃料経済に対する国民の支持は限られているのが実情です。最近の国連の報告書では、オーストラリアの気候政策が強化されない限り、洪水はさらに拡大すると予測されています。オーストラリアの環境・社会・企業統治(ESG)ファンドや再生可能プロジェクトへの投資は現在成長期にあり、最近は、オーストラリアの最も裕福な投資家2人が、太陽光発電を海底ケーブルでシンガポールに輸出する210億米ドルのプロジェクトに出資していることが明らかになりました。
優先順位の見極め
現在のオーストラリア政府は2022年上半期中に国政選挙を実施する必要があり、オーストラリアのエネルギー部門におけるビジネスチャンスはさらに多様化していくことでしょう。1月以降、多くの世論調査機関が国政野党の勝利を予測しています。歴史的に見ても、国政野党は現政権よりもサステナビリティへの取り組みを声高に支持してきました。
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この報告書はウェーバー・シャンドウィックのインサイト&情報チーム(シンガポール)が作成したものです。
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