ダボス会議速報トップ5
ダボス会議がスイス・アルプスで開催され、何千人もの参加者が熱気あふれる1週間を終えた今、TWSCのダボス・チームは、今年の会議で得られた貴重な収穫を振り返るとともに、2025年のダボス会議に向けて、情報発信者の指針となる動向について考察しました(既にプランニングを始めています!)今回は、ダボス会議2024から得た主要な収穫トップ5をご紹介します。
改めて実証されたダボス会議での「ROI(RETURN ON INTERACTION:交流の利益率)」
50 年以上の歴史を持つダボス会議は、ミッションや運営体制をめぐる様々な課題を抱えながらも、国際会議やパートナーシップ構築のプラットフォームとしての存在価値を、ダボス会議のベテラン参加者も初参加者にも、確実に証明することができたようです。世界経済フォーラム(World Economic Forum)の主要舞台に立つ権利を持つ 「ホワイト・バッジ」の所有者であれ、拡大傾向にあるダボス・フリンジ(=非主流派)に属する人々であれ、ダボス会議で集うことが、高いROI(RETURN ON INTERACTION:交流の利益率)に結びつくことは明らかでした。TWSCの現地チームが、多数のクライアントから聞いたのは、ダボス会議とは「50回分の出張を1つにまとめた」ようなものであり、個人的な交流やネットワークの共有が、後の官民パートナーシップや商業取引の強化へとつながるということでした。ダボス会議における交流の多くは、厳格な経営アジェンダの一部として組み込まれていますが、それでも、ダボス会議に参加する数多くの才気煥発な人たちと、せめて一度くらいはセレンディピティ(幸運な偶然)のような交流をして、自分が普段注目している業界や地域とは異なる視点から、画期的なアイデアやインスピレーションが得られることを期待したいものです。実際のところ、普段の活動範囲とは異なるステークホルダーと関わる機会を求め、セレンディピティな 「ダボス的瞬間」を創り出すことは、成功の秘訣として経営者たちの間でも挙げられており、ダボス会議は別名「マジック・マウンテン(魔法の山)」とも呼ばれています。
AIに行動を起こす時
今年のダボス会議では、グローバル・ビジネスにとって「今が勝負だ」という気迫が各所で感じられました。新型コロナウイルス以来3回目となるWEFの年次総会は、過去2回のように、人々がまだパンデミックの混乱から抜け切れておらず、ポリクライシス(複合危機)に慎重に対峙していた頃とは明らかに違う雰囲気に包まれていました。今年の参加者は、混乱した状況への耐性が高まっていた様子で、かつ、AI革命において「取り残されることへの不安」がモチベーションになっているように見受けられました。世界のビジネスリーダーたちは、変革への姿勢、また経営変革への姿勢を明確に示していました。
これは、ダボス会議で自社のサービスを売り込むIT企業にとっては朗報だった一方で、世界の地政学リスクに対して国際的な取り組みを支援している企業や組織にとっては、参加者の充分な関心を集めるのに苦戦したようです。ニューヨーク・タイムズ紙は、AIビジネスに関心が集まったことで、WEFの主要議題であったガザとウクライナの対話が「かき消された」と報じています。また「ダボス会議の出席者やリーダーたちは、この2つの戦争を現時点では世界経済への重大な脅威とは見なしていない」とも報じられており、AIがもたらす影響の方が、良くも悪くも、はるかに画期的なものであると考えられているとしました。また、フォーチュン誌のインパクトレポートの指摘によると、ダボスの(メイン会場に続く中心街である)メインプロムナードでは、ヘルスケアや気候変動はあまり重要視されていなかったということです。
今年のダボス会議では、ビジネス関連の話題が概ねAIに偏っていたものの、TWSCの現地チームは、上記のような指摘はメディアが仕組んだ「ゼロサム論(一方の利益が他方の損失になること)」であると留意し、各方面の広報関係者に対しては、テクノロジー主導の即時的なビジネスチャンスも、気候変動やエネルギー転換、医療への平等なアクセスといった、世界における重要課題への長期的な解決策に絶えず組み込まれていくべきだと呼びかけました。
CCO(最高コミュニケーション責任者)がアジェンダに
WEFが掲げた今年の公式テーマは「信頼の再構築」であり、今回の会議では信頼や誤報といったテーマが脚光を浴びました。また最近のWEFグローバル・リスク報告書では、今後2年間の短期リスクとして「誤報・偽情報」が挙げられており、それに拍車をかけているのが、AIのさらなる発展・普及と、2024年に予定されている約80の選挙という、混乱を招くには絶好の組み合わせだと言われています。
そのため、ダボス会議のアジェンダでは、最高コミュニケーション責任者(CCO)や最高マーケティング責任者(MMO)の役割がこれまでになく重要視されているようでした。WEFは、自らが実施している通年プログラムにおいて、コミュニケーション業界との関与を深める取り組みを行っていますが、それに加えて、今年のダボス会議では、コミュニケーションの専門家たちを対象とした副次的なプログラムも盛んに行われており、コミュニケーション業界が直面する最重要課題を取り上げた特別パネル・ディスカッションやネットワーキング・セッションも開催されました。(TWSCがダボスのギリシャハウスで開催した、誤報・偽情報に関するパネル・ディスカッションもご覧ください)。しかしながら、改善の余地はまだまだあります。将来的には、CCO が自社イベントや同業者たちの間だけでなく、主要舞台でも活躍する姿を見たいものです。今後にご期待ください!
「ダボス・フリンジ」が主流に
ダボス会議のベテラン参加者は、WEFの公式プログラム以外のイベントを「フリンジ(非主流)」と呼んでいますが、今年は、これまでにないほど、そのような副次的プログラムがダボス会議そのものであるという印象があり、公式バッジを持たない参加者でも、充実した目的主導型のアジェンダを体験することができるようになっていました。世界経済フォーラムが主催する公式プログラムは、アジェンダを構築し、国家元首や産業界の重鎮を招集するための重要指標であることに変わりはないものの、ビジネス主導の対話が盛んに行われるのがダボス・フリンジであり、最近では国家や企業などが主催するイベントが増え、その規模も大きくなり、内容も洗練されてきています。
例えばインドは多数のパビリオンを設けており、TWSCの調べではインドの州を代表する6つのパビリオンがあり、インド政府専用のスペースが2つ、さらに多数のインド企業がプロムナードにラウンジを構えていました。インドのHCL Tech社によるラウンジには、完全装備のポップアップ・スタジオが設置され、ある企業がコンテンツを撮影し、自社のデジタル・チャンネルを盛り上げるというユニークな機会を提供していました。
ニューヨーク・タイムズ主催のディベートが、パネル・ディスカッションに疲弊していた観衆を魅了し、現地イベントのベスト・プラクティスを披露
歓声を上げる観衆のもと、専門家たちが2チームに分かれ、国際協力の未来について意見を交わし、審査員にはアル・ゴア元副大統領やベルギー首相が名を連ねました。ダボスにおける「ディベート」が再び人気を博す中、ニューヨーク・タイムズ紙は、ダボスの観衆を巻き込むようなセッションのあり方について、ハードルを上げたと言えるでしょう。このセッションには、吟味された女性専門家ばかりが参加し、「国際協力はもはや亡びたのか」という問いをめぐって鋭い議論が展開されました。ニューヨーク・タイムズ紙の花形ジャーナリスト、デビッド・ゲレス氏の素晴らしい司会進行とタイムキープの手腕により、このセッションは、ダボスにおけるパブリック・スピーキングの限界を押し広げ、ありきたりのパネル形式とは一線を画す、刺激的なものとなりました。ニューヨーク・タイムズ紙は、近日中に自社のYouTubeチャンネルでこのディベートの録画を公開する予定ですが、それまでの間、昨年のディベートの様子をご覧いただけます。ネタバレ注意:良いニュースは、世界的な協力関係は決して滅びていないということです。
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