イスラエルとハマス 10/24
ハマスがイスラエルへの攻撃を開始し、イスラエルが反撃に出てから2週間あまりが過ぎようとしています。死者はすでに数千人、人質の数も数百人に達しています。アジア、特にASEANでは、パレスチナの大義を支持するデモが拡大しているものの、各国のスタンスは依然として分かれています。戦争の経済的影響を懸念する声もある一方で、一部の政府では比較的前向きな見方も。また、アジア諸国においては、人道支援活動も増加しています。世界全体では、各企業が、自社従業員との紛争への向き合い方に苦慮しており、意見の対立を招く恐れのある従業員に対しては措置を講じている企業もあります。
- 世界中のイスラム教徒によるデモが続いており、デモ参加者は即時停戦を求め、パレスチナ人への連帯と、イスラエルへの怒りを表明しています。 マレーシアでは10月22日、クアラルンプールのムルデカ・スクエアで数千人が集まり、パレスチナ大義を支持するデモが行なわれ、マレーシアでは過去10日間で3度目となる抗議集会となりました。ジャカルタでは、インドネシアの人々が複数のモスクからアメリカ大使館までデモ行進し、アメリカのイスラエル支援を非難。また、同じような抗議デモが、国連の公館前やインドネシア外務省の敷地内でも行なわれました。シンガポールでは、紛争に関するイベントや市民集会が禁止されている中、ある活動家がインスタグラムに平和と戦争終結を呼びかける投稿をしたことから、警察による捜査が入りました。タイでは10月21日、数百人がバンコクのイスラエル大使館前でデモを行い、ガザ空爆の中止を要求するとともに、空爆を行ったイスラエルと、それを支持するアメリカを非難しました。
- ASEANは共同声明を発表したものの、この戦争に対するスタンスは依然として分かれています。ASEANと湾岸協力会議(GCC)の指導者たちは、第1回首脳会議後の声明で、停戦、人道援助の提供、人質の解放、和平交渉の開始を呼び掛けていますが、ASEAN諸国においては、支持する立場が二分されています。マレーシアは、欧米諸国からの反感を覚悟の上で、今後もパレスチナ人の窮状を国際舞台で訴え続けていくと表明。シンガポールのリー・シェンロン首相は、ハマスによる10月7日のイスラエル攻撃を非難し、イスラエルには自衛する権利があると述べ、シンガポールの立場を改めて強調。フィリピンは民間人に対する暴力行為を非難し、イスラエルの自衛権を認めるとしています。
- 戦争によるアジアへの経済的影響への懸念は続いている一方で、それほど大きな影響はないと推測する政府もあります。アジアでは、10月23日、イスラエルとハマスの戦争が、地域紛争に発展するとの懸念から、市場が下落。 燃料価格が高騰するなか、日本はサウジアラビアをはじめとする産油国に対し、世界の石油市場の安定に向けて供給を増やすよう求めています。一方、タイの商務省によると、紛争による国内製品価格への影響はまだないということです。インドについては、インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)が難航しているものの、専門家によると、IMECが紛争の「犠牲者」になるかを判断するのは時期尚早だとしています。
- アジア諸国は救援活動を強化しており、中国は、国連や二国間ルートを通じてパレスチナに緊急人道支援を実施し、今後も継続する方針だと述べました。インドは約6.5トン分の医薬品と32トン分の災害救援物資を提供し、日本も1000万ドル(約15億円)の支援金をガザの民間人に提供すると発表しています。
- 世界各地の企業においては様々な反応が見受けられており、当初は戦争を非難する声明を発表した企業もあったものの、多くの企業は沈黙を守っているのが現状です。J.P.モルガン・チェース、ゴールドマン・サックス、グーグル、メタなどの経営幹部は、当初ハマスによるイスラエル攻撃を非難し、イスラエル国民との連帯を表明しました。また、多くの企業が、人道支援として数百万ドルの拠出を約束。しかし現在では、意見の対立を招く恐れのある従業員に対して、措置を講じる企業も出てきています。例えば、スターバックスでは、同社のバリスタ数千人を代表する労働組合が、親パレスチナ派のツイートをしたことにより、ブランドが毀損され、従業員も危険にさらされていると非難。世界最大級のテクノロジーカンファレンス「Web Summit」のCEOは、ガザにおけるイスラエルの軍事行動を批判したことで反発を受け、退任に至っています。さらに、各企業のダイバーシティ推進部は、この戦争について、どのように従業員と対話をすべきかで頭を悩ませています。
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