withコロナ時代:新たな日常でのパブリック・アフェアーズのあり方
2019年11月に中国・武漢で初めて、新型コロナウイルス発生が報告されてからわずか4ヶ月あまり。ほとんどの先進国でロックダウンの措置が取られ、経済活動が大きく制限される事態に陥ることを、誰が想像できたでしょうか。
新型コロナウイルスがパブリック・アフェアーズに与える影響
新型コロナウイルスが瞬く間に欧州全土に蔓延すると多くの尊い命は失われ、欧州各国は国民の命と安全を守り感染拡大を封じ込めるため、制限的な措置を講じました。
各国の緊急対策に追随する形で、欧州議会や欧州連合の各専門機関の活動は縮小が求められ、すべての職員もまた、自宅待機を命じられました。この非常事態下、当然ながら各国は公衆衛生上の脅威や経済的影響への対応に追われることとなり、EU主催の会議やイベントの延期や中止に加え、成長戦略の柱と位置づけてきた「欧州グリーンディール」や「欧州新産業戦略」、「循環型経済行動計画」、また広範にわたる「欧州デジタル化」などのアジェンダは、後回しとなってしまいました。
コロナ前のような経済活動がいつ再開できるのかという点はさておき、ウイルスの流行が次第に鈍化そして終息に向かうとしても、社会や経済への影響が長期化することは確実であり、今後、欧州員会が取り組むべき課題は多岐にわたり挙がることでしょう。
先述の通り、今は国民の健康が各国の最優先課題となってしまい、デジタルシングルマーケット戦略に関する協議やGDPRの見直しなど、いくつかの政策は先延ばしになっています。しかし、何もこれらが不要になったわけではありません。むしろ、世の中が一変するコロナ後の新たな日常で、ルール整備は必要不可欠となり、制度的な公共政策は今まで以上に緊急性をもって進めていかなければいけません。感染症の発現は自然環境と密接な関係にあると感じる人たちの間では、すでに「欧州グリーンディール」を経済回復の中心に据えるべき、という声が集まっているほどです。
欧州委員会のパブリック・アフェアーズ部門は、未曾有の事態で浮き彫りとなった多様な社会課題の解決に向けたアプローチやコミュニケーション方法を模索すると同時に、今一度、達成すべき本質的な目的の見直しを行っています。
危機こそ社会変革の好機
社会の進化は、危機から生まれます。
未知のウイルスが引き起こした未曾有のパンデミックは、グローバル社会の新たな課題を露呈し、解決のための新たなルール整備の必要性を強調しています。このムーブメントをより多くの人に知ってもらうためのパブリック・アフェアーズ活動は、今後世界を大きく変革させる力を秘めているといっても過言ではありません。
よりよい世界の未来のため、パブリック・アフェアーズの専門家として私たちは、今までにないアプローチで公共政策の意思決定者(=政治家)だけでなく社会全体を巻き込む形で、社会課題を解決していくことが肝要であると考えています。
長い自粛生活の中で、対面でのコミュニケーションの大切さを再認識できた一方で、利便的かつ効率的なオンライン会議やオンラインイベントはもはや当たり前となり、相互利用の新たなコミュニケーションの形が発達していくことでしょう。
欧州におけるパブリックアフェアーズに関するレポートはこちらからご覧いただけます。(英文のみ)