アジアにおけるエネルギー事情
- アジア各地のエネルギー市場では、持続可能性への要求と、高まるエネルギー需要や脆弱な送電網とのバランスを取るべく努力が続けられています。
- 多くの市場において、洪水や熱波といった異常気象による広範囲な停電が予想されており、現時点でもその対策が必要とされています。
- 企業や政府は、現在の需要を十分に満たすための資源を確保しつつ、再生可能エネルギーへの投資を拡大する取り組みを進めています。
- しかし、この地域の多くの市場は、様々な要因によるエネルギーの途絶が続き、相反する優先事項の調整に苦慮しているのが現状です。
シンガポールでは、今後予想されるピーク時に向けて、初めてマレーシアからの電力が一部に充てられる予定です。インドにおいては、選挙運動を展開する政党が、有権者の生活費負担を軽減するために、数週間の電力無料化を公約として掲げています。インドネシア政府は、2023年の石炭採掘目標を5,000万トン引き上げました。
さまざまな摩擦
アジア太平洋地域は、現在課題が深刻化し、複雑化するエネルギー市場において調整を続けています。各国のエネルギー市場は、かつてないほどの需要や、激化する気候変動、広範囲にわたるシステム障害などに直面する一方で、より持続可能な送電網への移行を目指して努力を重ねています。
ニュージーランドでは、前例のない大洪水が発生し、数千世帯が停電に見舞われています。オーストラリアでは、迫り来る熱波と電力使用量の増加に伴い、複数の州における広範囲な停電が予想されています。タイでは、燃料消費量が過去1年間で13.5%上昇したと報告されています。
加速する変化
これを受けて政府や組織は、再生可能エネルギーへの移行を急ピッチで進めると同時に、現在の需要を十分に満たすだけの資源を確保しようとしています。インド政府は、次期予算の大半をエネルギー移行対策に充てる一方で、拡大する需要に応じて石炭火力発電を最大化する見込みです。
日本では、国内初となる商業ベースの大型洋上風力発電所が運転を開始しました。バングラデシュ政府は、高まるエネルギー需要に対応すべく、8ヶ月ぶりにガスを海外から調達しています。世界最大級の家具・インテリア小売企業は、オーストラリアに建設されている14億米ドルの風力発電所に15%の株式投資を行ったとのことです。
複雑化する課題
しかしながら、この地域のエネルギー部門は、他にもさまざまな問題に直面しています。インド最大級の資源系多国籍企業であり電力供給会社でもある会社は、詐欺、市場操作、債務未申告などの疑惑を受け、最近1000億米ドル以上の損失を被ったとされています。
シンガポールでは、新たに提案されている消費者保護法によって、電力会社にはさらなる圧力がかかると予想されています。オーストラリアでは、地域社会の不安定な送電網を補うために調達された10万トンの石炭が、異常気象の影響で運搬不能となっています。
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