旅行とアジア太平洋地域
ウェーバー・シャンドウィックのAPAC Intelligence Bulletin(アジア太平洋地域情報速報)では、毎週、アジア太平洋地域の産業分野や市場を方向付ける重要な動向をお伝えしています。
- アジア全域において、旅行業界は広範囲にわたる消費者ニーズと、人材・インフレ・設備・コロナ政策といった現実面での制約とのバランスを図ろうとしています。
- その結果、国内旅行が海外旅行を上回り、鉄道ネットワークの価値が高まっています。
- オーストラリアやニュージーランドなどでは、国内旅行へのシフトにより、公共交通機関のインフラがより重視されるようになっています。
- この業界の将来は、消費者の持続可能性への関心によって推進される模様で、専門家は、この点が、旅行業界における2023年の主要トレンドになると予測しています。
新型コロナウィルスの変種が各地に拡散し続ける一方で、アジア太平洋地域における消費者の旅行に対する熱意は健在です。2022年10月のシンガポールにおける海外旅行者数は、9カ月連続で増加したと報じられています。業界のリーダーによると、インドでは、国内旅行が現在、パンデミック前の水準を上回っているとのことです。
難しいバランス
この地域の旅行業界が直面している課題は、旅行をすることが複雑であるという状況の中で、需要と供給のバランスをいかに効果的に取るかということです。タイでは、現在の人材不足が解消されなければ、同国の主要空港のうち6つが「運用上の混乱」に陥る可能性が高いと専門家が警告しています。
中国では、旅行代理店が国内の旅行業者を支援し、消費者の旅行へのニーズを満たすため、リゾート・スパ施設の建設を開始しました。フランス領ポリネシアの政府は、太平洋諸島の持続可能性ロードマップの一環として、年間観光客数を近々28万人に制限することを発表しています。
航空機による旅行は、複数の市場において、コスト上昇やその他の難題を抱えている状況です。インドでは、12月の国内線運賃が前年同月比44%増となっています。日本の運輸省は、最近の渡航制限の緩和を受けて、消費者の需要を満たせる人材を確保するために、外国人パイロットの免許取得要件を緩和しています。
鉄道の導入
消費者の需要と航空業界の複雑な事情が重なり、鉄道ネットワークへの期待が高まってきています。ラオス、インドネシア、タイ、マレーシア、中国の各政府は、2023年に新しい鉄道路線が開通することにより、観光面での効果が期待できると考えています。インドでは、最近の祝祭シーズンに鉄道旅行が大幅に増加しました。
鉄道への注目は、公共交通機関のインフラに対する厳しい評価にも関連しています。オーストラリアで最も人口の多い州の政府は、現在、列車の安全性について長期にわたる争議交渉を行っています。ニュージーランドの運輸相は最近、国内鉄道網の拡大について、気候変動対策を求める活動家たちとの協議に合意しました。
成長の維持
消費者の間では、持続可能な旅行手段を優先する傾向が強まっています。最近の世界的な調査では、回答者の87%が、将来の旅行ではサステナブルな旅行をしたいと思っていることが分かりました。アジア太平洋地域の業界リーダーたちも、環境に配慮した旅行が2023年の主要トレンドになると予測しています。
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この報告書はウェーバー・シャンドウィックのインサイト&情報チーム(シンガポール)が作成したものです。
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